NotebookLMと著作権・IPの基本解説

〜同人誌とドラえもんの例から学ぶ、AI時代の著作物との向き合い方〜

生成AIや情報活用が広がるなか、
「著作権」や「IP(知的財産)」の知識は、
すべての情報発信者にとって重要です。

特に、GoogleのAIツール
「NotebookLM」のように、
資料をアップロードして使うAIでは、
他人の著作物をどこまで使って良いか、
迷うこともあるでしょう。

この記事では、
「ドラえもん」を題材に、
著作権と知的財産権の一般的な概念、
同人誌と二次創作における著作権の考え方、
そしてNotebookLMでの注意点を解説します。

目次

NotebookLMと著作権・IP

1. NotebookLMとは?

NotebookLMは、
ユーザーがアップロードした
PDFやGoogleドキュメント、
ウェブページをもとに、AIが回答してくれる
ツールです。

  • アップロードした内容だけを使ってAIが答える
  • 回答には出典(引用元)も表示される
  • 情報はAIの学習には使われない(プライバシー保護)

便利な一方で、
「他人が作った資料」や「著作物」を
アップロードする際は、
使い方に注意が必要です。

2. 著作権とは?

著作権法は、
「著作者等の権利・利益を保護すること」と
「著作物を円滑に利用できること」のバランスを
とることを重要視しており、
新たな創作活動を促し、
「文化の発展に寄与すること」を目的としています。

著作権法が保護する対象は「著作物」です。

著作物とは、
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、
文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています。

  • 著作権は作品を作った人に自動的に発生し、著作物を創作した時点で、著作者は何ら手続きを取らなくても、自動的に著作者の権利(「著作権(財産権)」及び「著作者人格権」)を取得し、「著作権者」となります。
  • 著作権は、複製、上演、演奏、公衆送信といった著作物の利用形態ごとに権利(支分権)が定められており、これらの行為を行うには原則として著作権者の許諾が必要です。
  • 著作権者の許可なく利用すると、著作権侵害となる可能性があります。著作権が侵害された場合、著作権者は、民事の対抗措置として、侵害行為の差止請求や損害賠償請求等が可能です。また、著作権侵害行為は、刑事罰の対象ともなります。

📌 たとえば、「ドラえもん」のマンガの一部を
無断でコピーして配布する行為は、
複製権や譲渡権の侵害となる可能性があります。

また、AIに既存の著作物を読み込ませて
「創作的表現」が共通する似たストーリーを生成し、
公開する行為は、元の著作物との類似性および依拠性
認められる場合、翻案権や公衆送信権の侵害となる可能性があります。

ただし、単なる事実やデータ、ありふれた表現、
あるいは「作風・画風」のような「アイデア」は
著作権法による保護の対象に含まれません

アイデアを保護対象とすると、
新たな創作や表現を阻害するおそれがあるため、
自由に利用できることで表現の多様性が確保され、
文化の発展につながると考えられています。

3. 知的財産権(IP)とは?

著作権は、
上記のように「作品そのもの」に発生する権利であり、
その「創作的表現」を保護の対象とします。

一方で、一般に「知的財産権(IP:Intellectual Property)」は、
著作権だけでなく、特許権、商標権、意匠権など、知的財産全般を指す
広範な概念として使われます。

本稿の参照元である文化庁の資料は、
主に著作権法における「著作物」の保護と
利用について解説しており、

「キャラクターや世界観を含めた“ブランドそのもの”」という
広い意味での知的財産(IP)の定義やその管理・活用については、
直接は触れられていません

📌 一般的な理解に基づけば、
ドラえもんのブランドに関する
役割と資産の例は次のようになります。

✍️ 著作者
藤子・F・不二雄(キャラクターとストーリーを創作)

💰 収益者
小学館、テレビ朝日、シンエイ動画など(知的財産を管理・活用し収益を得る主体)

💎 知的財産(IP)
「ドラえもん」というブランド
(キャラクター、世界観、名称、デザイン、道具など、その価値ある要素すべて)

4. 同人誌と二次創作における著作権の考え方

同人誌とは、ファンが描いた二次創作
(オリジナルの続きを描くなど)です。

たとえば:

  • ドラえもんが現代社会で働くパロディ作品
  • のび太としずかちゃんの未来を描くストーリー

これらの作品が、
既存の著作物(「ドラえもん」)の
「創作的表現」に類似し、かつそれに依拠して創作されたものである場合
原則として著作権侵害となる可能性があります。

特に、元の作品を改変して新たな作品を
生み出す場合は、翻案権の侵害に該当し得ます。

日本の同人文化において
「非営利・小規模」なものが黙認されている
という一般的な見解がありますが、
これは著作権法に明示された規定ではありません

著作権法には、
一定の条件を満たす場合に著作権者の
許諾なく著作物を利用できる
権利制限規定」が設けられています。

例えば、個人的に、
または家庭内などの限られた
範囲内で使用することを目的とした
私的使用のための複製」は、
権利制限規定に該当し、
許諾なく行うことが可能です。

しかし、同人誌の頒布は通常、
私的使用の範囲を超え、譲渡行為に該当するため、
原則として著作権者の許諾が必要です。

5. NotebookLMで著作物を使うときのポイント

NotebookLMに資料をアップロードして
AIに内容を聞く際、著作物が含まれている場合の利用は、
以下の基準で判断が必要です。

  • 自分だけの学習目的(個人利用):
    • OKです。著作物を個人的に、または家庭内などの限られた範囲内で使用することを目的として複製する行為は、「私的使用のための複製」(著作権法第30条第1項)として、著作権者の許諾なく行うことが可能です。
  • セミナーや講座で使う目的:
    • 利用目的や態様によります。もし、他人の著作物の一部を自身の著作物の中で紹介する形式であれば、「引用」(著作権法第32条第1項)の規定が適用される可能性があります。引用が認められるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
      • 公表された著作物であること
      • 公正な慣行に合致すること(引用する「必然性」がある、引用部分が明確)
      • 引用の目的上「正当な範囲内」であること(引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確、引用される分量が必要最小限度)
      • 出所を明示すること
    • また、学校その他の教育機関において、教員や生徒が授業の過程で利用する場合であれば、「学校その他の教育機関における複製等」(著作権法第35条)が適用されることも考えられます。ただし、これらの権利制限規定の要件を満たさない場合は、著作権侵害となる可能性があります。
  • 商用資料・SNS投稿など公開・営利目的の利用:
    • 原則NGです。AI生成物の**公開(公衆送信)や販売(譲渡)**は、個人的な利用の範囲を超える行為であり、多くの場合、権利制限規定の対象外と考えられます。
    • そのため、生成されたコンテンツに既存の著作物の**「類似性」および「依拠性」が認められる場合**、その公開や販売には著作権者の許諾が必要となります。AI利用者は、利用に先立って、生成物が既存の著作物と類似していないかを確認することが重要です。

まとめ

  • 📚 著作権は創作した人の「創作的表現」を守るルールであり、作品が作られた時点で自動的に発生します。
  • 💎 「知的財産(IP)」は、著作権を含む広範な概念として一般に用いられますが、本稿の参照元である文化庁の著作権に関する資料では、その具体的な定義や管理・活用については詳細には触れられていません。
  • 📌 ドラえもんのような既存の著作物を使った同人誌や二次創作は、「創作的表現」の類似性・依拠性があれば、原則として著作権侵害となる可能性があります。非営利・小規模な利用であっても、著作権法上の権利制限規定に該当しない限り、許諾が必要です。
  • 🤖 NotebookLMなどAIツールを使うときも、他人の著作物を含む資料をアップロードする際には、利用の「範囲」と「目的」を明確にし、公開の有無を確認して、著作権法に基づき適切に扱いましょう。特に、個人利用の範囲を超える場合(商用利用やSNSでの公開など)は、既存の著作物の著作権侵害とならないよう、細心の注意が必要です。
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